パンディット・ラヴィ・シャンカール、紅茶をすするオウムを見る26
音楽界では、ウスタード・アラウディン・カーンがラヴィ・シャンカールのグル(師、先生)だったが、スピリチュアルの世界では、彼のグル、唯一のグルはタット・ババだった。ラヴィ・シャンカールは自伝の「我が音楽、我が人生」の中で、スピリチュアルに実に意味深いこんな出来事について書いている。知ってのとおり、スピリチュアル・マスター(魂の師)は何でも好きな形を取ることができる。ある日、ラヴィ・シャンカールのグル、タット・ババが遠くの町に出かけたときのこと。突然弟子の1人がラヴィ・シャンカールのところへ叫びながらやって来た。「ババが来られた! ババが来られた!」
ラヴィ・シャンカールはけげんに思った。グルはここにはおられないことを知っていたからだ。グルがおられるという場所に行ってはみたものの、まさか本当にそこにいるとは信じられなかった。実のところ、この弟子の献身ぶりは少々狂信的なのではないかと思ったほどだ。
その家に着くと、目に入ったのは何だったか? ババの椅子に留まっている奇麗なオウムだった。この椅子はババしか座れないことになっている。鳥の好きな餌を持ってきた者がいたが、オウムは全く興味を示さない。ところが紅茶がカップに入っているのを見ると、少しずつその紅茶をすすり始めた。この時までには、そこにいた弟子全員が、このオウムは実は親愛なるタット・ババに他ならないということに気づいていた。タット・ババは紅茶が大好きだったのだ。
オウムはその椅子に3日間いつづけ、その間敬意を払うため、たくさんの人が訪れた。ラヴィ・シャンカールもまた、そのグルの前で頭を下げた。そしてある日、オウムは窓からいなくなった。
TCE 33. 2002年10月30日↩
Sri Chinmoy, 私の紅茶とコーヒー体験談, Agni Press, 2009