編者まえがき

2006年10月28日、シュリ・チンモイは紅茶とコーヒーにまつわる思い出話を語ってくれた。この人生ではもう2度とどちらも飲まないと、随分前に亡くなった姉のアハナの魂と約束した1999年までの経験談である。

本書には、その夜にシュリ・チンモイが語った思い出と、折に触れて聞かせてくれた他の話がまとめられている。この中には、有名な人物にまつわる紅茶とコーヒーのエピソードも収められている。スワミ・ヴィヴェーカーナンダ、ラビンドラナート・タゴール、ノリニ・カンタ・グプタ、ライサ・マクシーモヴナ ゴルバチョフ夫人、パンディット・ラヴィ・シャンカールといった面々である。紅茶にまつわるシュリ・チンモイ作の短編も一作収められている。また、他書からの引用も掲載した。この中でシュリ・チンモイは、ゆっくりと着実に歩む悟りへの道とは正反対のものとしてインスタント・コーヒーを比喩に使っている。

シュリ・チンモイはコーヒーと紅茶を「回りの遅い毒」とし、その過剰摂取をいましめたが、一方で生徒によっては摂取を勧めることもあった。特に州をまたがる長時間の運転をする前や、徹夜のプロジェクト、ある種のマラソン競技の場合などである。また生徒には、おいしいコーヒーと紅茶が自慢のカフェの経営に携わっている者も多い。有機栽培コーヒーの卸業も1人いるくらいである。そして世界中にいるシュリ・チンモイの生徒が経営するベジタリアン・レストランで人気メニューの1つは、インドのチャイである。

シュリ・チンモイの紅茶とコーヒーに対する姿勢は、現代に生きたスピリチュアル・マスターの愛情あふれる無数の側面の1つといえるのではないか。最高の精神的レベルからは、あらゆる場でシーカーに、神へと続く「日に照らされた道」を提示した。一方人間的レベルでは、この世界で生きるということに心から参加した。コーヒーを飲むということも含めて。それは、7マイル・レースをさっそうと走る前だったり、休みなく世界に奉仕する合間のひと時、空港で飛行機を待つ間だったりしたのだ。