第九場

[イエス、マリア、ヨセフはナザレの家にいる]

イエス: お母さん、お母さん、あの空にあるのはなあに?

マリア: あれはお月様よ。

イエス: お月様! とってもきれいだね!

マリア: イエス、あなたの方がもっとずっとかわいいわよ。

イエス: ううん、そんなことないよ。お母さん、ぼくね、あそこまで行って、お月様をここに下ろして来たいんだ。

ヨセフ: 月まで行く必要はないぞ。月がおまえのところまで来てくれるよ。

イエス: 何のために?

ヨセフ: 一緒に遊ぶためだ。

イエス: ぼくと遊ぶの! いいな! (ヨセフに向かって) ねえ、お父さん、夢の中ですっごくきれいな人たちに会うんだよ。ぼくのところに来て、一緒に遊ぶんだ。ぼくのことがほんとうに大好きなんだよ。

マリア: その人たちが誰だか知ってる?

イエス: 知らない。でもね、お母さん、ぼくはとっても好かれているんだ。親友だよ。

マリア: その人たちは天使、って言うのよ。

イエス: 天使、天使か! お母さん、でも昼間は見えないんだ。どこに隠れているんだろう?

マリア: 昼間は空に隠れているのよ。

イエス: じゃあ、空に飛んで行って天使をつかまえちゃおう。

マリア: 飛んで行ってつかまえる必要はないのよ。天使の方でイエスのところまで来てくれるわ。あの中の一人がお父さんとお母さんのところにやって来て、あなたが神の最愛の息子だって教えてくれたんだから。

イエス: それって、どういう意味?

マリア: 天国にいる主が、あなたを一番愛しているっていうこと。あなたは主のお気に入りなの。

イエス: ぼくが? 神様のお気に入りなの? じゃあ神様に会いに行かなくちゃ。神様のお家に連れてって。

マリア: 明日モリヤの丘にある神殿に連れていってあげましょう。

イエス: ありがとう、お母さん。明日、神様のお家に行くんだね。明日、神様に会えるんだね。ありがとう、お母さん、ありがとう。