第十八場

[イエスとマリア]

イエス: 母上、歌を歌って下さい。私にも母上のような歌声があったらどんなにいいか。

マリア: 息子よ、私にもあなたのような光り輝く心があったらどんなにいいか。

イエス: 母上、歌って下さい。

[マリアが歌う。]

私の命は責務の誇りで始まった
私の命は美の光と共に生きる
私の命は現実の魂と戯れる
私の命は神性の高みと終わる

イエス: 母上の心震わす歌声を、天国で懐かしく思うことでしょう。あと数日で私は十字架に張りつけになります。

マリア: 何ですって! 信じられない! そんなことは許しません。最愛の息子よ、自分を救うためにあなたの持つ神力は使わないのですか? どうか使ってちょうだい。そうしたら、母は本当に嬉しく、誇らしく、ありがたく思います。

イエス: 母上、母上に満足して欲しくて、結婚式で最初の奇跡を起こしました。水を葡萄酒に変えました。そしてこの旅路の最後に、また母上に満足して欲しいので、もう一つ奇跡を起こしましょう。奇跡の中の奇跡です。天の父なる神が私に戻って来てほしいと願っているので、戻らなければなりません。でも死んだ三日後に再び現れて皆に会いに来ます。この奇跡は主の創造物の歴史の中でも他に類を見ないものです。

我が心の母よ、このように母上には別のやり方で満足していただきます。この体はなくなるけれど、私が不滅で永遠だということを世界に証明します。体は朽ちていくけれど、魂は不滅です。この体の役割は終わりました。もう地球に留めておく必要はないでしょう? 母上、もうすぐ天国でまた会えますよ。

マリア: 会えるの? 息子よ、一緒にいけたらどんなにいいか。

イエス: 母上の時はまだ来ていないのです。でももうすぐですよ。

[マリア・マグダレナがしくしく泣きながら入ってくる。]

マグダレナ: 主よ、夕べ恐ろしい夢を見ました。主が十字架に張りつけにされるのです。十字架から、何か飲むものを頼まれると、葡萄酒が運ばれました。主は葡萄酒を飲まれ、頭を垂れると、「すべてが終わった」と言われました。本当にリアルな夢で、私の内的存在が容赦なく苦しめられています。心が完全に壊れてしまいました。主よ、お願いです。この夢は全部幻覚だった、真実はこれっぽっちもない、とおっしゃってください。

イエス: 他にも何か見たかい?

マグダレナ: はい、見ました。信じられないものを見ました。主の死後、三日経ってから、主が私の前に現れるのです。はっきりと主が見えました。それを言いにペテロや他の弟子のところへ急いで行きました。すると、一人を除いて皆が信じました。

イエス: 誰だった? 誰が信じなかった?

マグダレナ: あの可哀想なトマスです。

[トマスが入ってくる。]

トマス: マグダレナ、主と話しているのが聞こえてしまったよ。私も同じような夢を見た。その夢では他にも見たことがある。主が、限りない恵み深さで、私が間違いなく信じることができるようにしてくれ、こう言われたのだ。 「私が見えるから信じるのだな。私を見ないのに信じる人たちは幸いである。」

[トマスが歌う。]

疑いで私の頭は始まった
恐れで私の心は始まった
土で私の人生は始まった
すべてこの最も短い寿命の中で

イエス: 素晴らしい、素晴らしい。君がそんなに甘く優しい声だったとは全然知らなかった。トマス、君の夢にはずいぶん現実が含まれている。マグダレナ、君の夢はもうすぐ現実となるだろう。マグダレナ、一曲歌っておくれ。長い間私のために歌ってくれていない。

[マグダレナが歌う。]

かつて、ただつまずき続けたことがあった
でも今は、ただ彼方まで登り続けるだけ
到着地の終わりなき彼方を遥か越えたところまで
それでも我が指揮官は命じる
「進め、進め!」と

イエス: マグダレナ、君にはとても満足している。父なる神が必要なのは純粋な心。君にはそれがたっぷりある。純粋な心は無類の宝だ。何ヶ月か前に私が「心の清らかな人たちは幸いである。彼らは神を見るだろう。」と言ったのを聞いていたね。君には私の中の神が見えるだろう。

マグダレナ: 主よ、もう私には主の中の神が見えています。それだけでなく、主を神としか見ていません。主は天の父なる神に他なりません。主がすべてをされているのに、すべて父なる神のおかげにされています。それほど主の心は寛大なのです。

イエス: 親愛なるマグダレナ、それは違う。我が天の父が唯一の行為者だ。私は父上の、ただの道具にすぎない。

Nimitta matram
nimitta matram
nimitta matram
nimitta matram

(私はただの道具にすぎない。)