ザトペックと水

 そのスタジアムで何時間も過ごした。そこでは私は普段紅茶などを飲むのだが、どういうわけか今回は良い子になり、水しか飲まなかった。弟子に紅茶を持って来いとは、とても頼む気になれなかったからかもしれない。3、4回水を飲んだ。とても喉が乾いていて暑かったのだ。ザトペックは私を見ていた。ただしその時は見られているとは気づかなかった。

 ザトペックはビールが好きだ。彼のホテルへ一緒に戻ると、各部屋に小さな冷蔵庫が据え付けてあった。そこでザトペックは奥さんにビールを持って来るよう頼んだが、その後考えを変えて、

「いやだめだ、だめだ! シュリ・チンモイは水を飲んでいた。あれを見た後にビールは飲めない。」と言った。

彼が言った通りの言葉だ。そして水をくれるよう奥さんに頼んだ。

 奥さんは嬉々として水を持ってきた。何故なら、何年もビールの量を減らすよう夫に言ってきたからだ。するとザトペックは奥さんをさらに喜ばせようと、

「よし、もうビールは飲まない。本当にごくたまにしか飲まないことにする。あとはいつも水だけにする。シュリ・チンモイは水を飲んでいた。もうビールは飲めない。」と言った。  その夜彼はビールを飲まず、次の日も飲まなかった。水しか飲んでいなかった。二日間ビール断ちをしたことになる。奥さんは夫が願いを聞いてくれたことに喜んでいた。

From:Sri Chinmoy,挨拶(1〜4), Agni Press, 1981
https://ja.srichinmoylibrary.com/slt_1 より転用