競技会

 2時間後にお二人と競技会で再会した。世界チャンピオンも何人か出場していて、様々な国から集まった人たちだった。皆でザトペック夫婦と一緒にギャラリー席に座った。最初は彼はとてもシャイで、奥さんがほとんど話していた。ザトペックが私に冷たくしていたわけではないが、あちらを見たりこちらを見たり、ときには目を閉じたりしていた。奥さんは完全にリラックスしておしゃべりしていた。ザトペックはたくさんの言葉を話せるが、英語に関しては奥さんの方が上手なようだ。

 5000メートル走の最中、ザトペックは自分が勝って欲しいと思うランナーを一人選び、

「このランナーが一番になる。」と言った。

偶然にもそのランナーは約一年前私に手紙を書いてきた人だった。私のことを耳にし、私がしたあることについて激励してくれた。その人とこのランナーが同一人物だとザトペックに言うのを忘れていた。ザトペックは手を叩きそのランナーの名を大声で叫んでいたが、一番にはならなかった。後で、そのランナーが私に会いたいということだったので、その人の所へ行き祝いの言葉をかけ、元気づけた。

 ザトペックが5000メートル走の表彰役として出ていくと、聴衆みんなが拍手を送った。スタジアムにいた誰もが彼のことを盛んに称えていた。

From:Sri Chinmoy,挨拶(1〜4), Agni Press, 1981
https://ja.srichinmoylibrary.com/slt_1 より転用