サイン会

 レースが終わると皆がザトペックにサインしてもらおうと列を作った。私の所へ来て小さなスクラップブックにサインしてほしいという人たちもいた。ゼッケンにサインしてほしいと頼まれたりもした。

 アバリタがザトペックについて書いた本は皆に好評だった。ドイツ語で書かれており、アバリタがザトペック家に滞在した時の会話が収録されている。レース前も後もランナーが何人もザトペックの所へやってきて、その本にサインしてほしいと頼んでいた。カーラが本の販売役で、ザトペックと奥さんは隣同士に座ってサインをしていた。大事な人だと判断したら、奥さんにもサインするよう促していたが、それ以外の時は彼のサインだけで充分だった。何百人という人が来て列に並んだ。

 列に人がまばらになり始めると、私も並んだ。前には7、8人の人がいたのだが、アバリタが頼んで私が前に行けるようにしてくれた。

 ザトペックの前にアバリタの本を持って立つと、

「大きな感嘆を込め、最高のグルに捧げます。」と書いてくれた。そして自分の名前をサインし、やり投げで標的を定めている絵を描いた。私と同じように彼も芸術家になったのだ。自分のサインにイラストを添えて。私はサインをする時、鳥を描く。ザトペックの場合は、やり投げを描いた。

From:Sri Chinmoy,挨拶(1〜4), Agni Press, 1981
https://ja.srichinmoylibrary.com/slt_1 より転用