ザトペックから聞いた話

 ザトペックからたくさんの話を聞いた。そして私からもたくさん質問をした。彼が言うには、お父上は彼がランニングをするようになったことを非常に悲しく思い腹を立てていたと言う。

「お前は家族の恥だ。隣村でお前が走っているのを近所の人たちに見られていた。いろいろ悪いことを言われている。」

ザトペックは自分の村では練習しなかった。なぜなら批判され、嫌われたからだ。それでお父上は、とてもとても悲しい思いをしていた。

 ところがザトペックがチャンピオンになると、新聞が置いてある店を全部回り、息子の写真が載っている新聞を集めた。ザトペックの写真だけを集め、何冊も何冊もアルバムを作った。友人や親戚が訪ねてくると、息子のことを聞かれなくてもそのアルバムを見せたという。それまで父親は息子のランニングに大反対だった。しかし近所の人たちが息子を評価し始めると、本人よりそのランニングから喜びを得るようになった。私の場合も同じことが起こった。私が一番になると兄のマントゥの方がもっとずっと喜んだものだ。

 本で読んだ情報を確認するため、ザトペックに100メートル、200メートル、そして400メートル走のタイムを聞くと、教えてくれた。あろうことか私のタイムの方がよかったが、言わないでおいて当然だった。私は短距離走者だったのに対し、ザトペックは中距離、長距離ランナーだったのだから。

From:Sri Chinmoy,挨拶(1〜4), Agni Press, 1981
https://ja.srichinmoylibrary.com/slt_1 より転用